市場全体の雰囲気:「嵐の後の静けさ」
現在の暗号資産市場は、公式には「弱気相場」の中にあります。時価総額は2025年10月のピークから約47%減少しており、6月はビットコインにとって4年間で最悪の月となりました。ただし今回の下落局面では、価格が下がるたびに買い手が継続的に参入してきたことから、過去の下落と比べて比較的穏やかな展開になっているのが特徴です。
7月に入ってからは回復の兆しも見え始めており、全体として「崩壊寸前だが、まだ崩壊はしていない」という不安定なバランスの上に成り立っている状況と言えるでしょう。
主な数字
- 市場全体の時価総額:約2.3兆ドル
- ビットコインの市場支配率:約55.5%(投資家が値動きの荒いアルトコインより、比較的安全なビットコインを選んでいることを示す)
ビットコインの現状
現在6万1,500ドル前後まで上昇し、着実に段階的な回復を続けています。注目すべきは、長期保有者(155日以上動かしていないアドレス)が保有するBTCの量が過去最高に達していることです。短期保有者(投げ売りしている人たち)からBTCを買い集める動きが顕著で、確信度の高い投資家が下落にもめげず買い増している証拠とされ、歴史的には市場安定化のサインとされています。
過去の下落相場には「ピークから約1年続く」というパターンがあり、昨年10月がピークだったとすると、そろそろ底打ちのタイミングに近づいている可能性も指摘されています。
イーサリアムの状況
イーサリアム(ETH)は1,800ドル前後で推移しており、ビットコインより弱いパフォーマンスとなっています。理由としては、①ETFへの資金流入がBTCより少ないこと、②次期大型アップグレードの遅延、の2点が挙げられます。ただし2026年後半に予定されている「Glamsterdam」アップグレード(処理能力向上・手数料削減が目的)は期待材料として注目されています。
アルトコインは苦戦中
ビットコイン・イーサリアム以外のアルトコインは、より深刻な下落を経験しており、資金がビットコインやステーブルコインへ逃げる、いわゆる「質への逃避(フライト・トゥ・クオリティ)」の動きが見られます。これは投資家がリスクを避けたがっている典型的な行動パターンといえます。
米雇用統計:最大の注目トピック
今回発表された米雇用統計は、市場予想を大きく下回る結果となりました。
- 予想11.3万人増 → 実際5.7万人増(ほぼ半分)
- 失業率は4.3%→4.2%に改善(数値としてはややちぐはぐな内容)
- 賃金は前年比3.3%上昇と、インフレの粘着性は継続
利上げ織り込みの変化
- 9月FOMC:利上げ織り込みが約90%→65%程度に低下
- ただし10月FOMCまで含めると、80%程度は織り込みが継続
雇用は弱い結果でしたが、マーケットの反応は限定的で、10年債利回りはむしろ上昇しました。これは「今後はCPI(消費者物価指数)の方がより重要な注目材料になる」ことを示唆していると見られています。弱い雇用とインフレの粘着性という組み合わせが続けば、逆に利上げ観測が強まるリスクもある点には注意が必要です。
半導体株 vs ハイパースケーラー
ここ最近好調だった半導体関連株に対して、Meta(メタ)が自社でクラウドインフラ事業に参入する動きが話題となっています。
- 半導体関連株のバリュエーションが割高になっている一方、Meta・Amazonなどハイパースケーラーの株は相対的に割安に放置されている状況
- Metaの狙いは「他社の高いサービスを奪う」というよりも、計算資源(コンピューティングパワー)は今後いくらあっても足りないという認識のもと、自社で確保しておくヘッジ的な意味合いが強いという分析
- 短期的には半導体株の下落要因となっているが、長期的には必要不可欠なインフラとして成長が続くとの見方が根強い
この動きを受けてNASDAQは軟調な一方、ダウは最高値を更新しており、割高だった半導体セクターから割安なセクターへ資金がシフトする「セクターローテーション」が起きていると見られます。
イラン原油の制裁猶予
- 交渉期間中、イラン産原油の輸出制裁が約60日間解除されている
- しかし「いつ制裁が復活するか分からない」という不透明感から買い手企業がほとんど現れず、イランは在庫を抱えて困っている状況
- 欧州も中国も慎重姿勢を崩しておらず、8月中旬の期限が近づくにつれてイランの交渉力は弱まっていく見通し
なお原油価格自体は開戦前の水準(65ドル前後)まで戻ってきており、地政学リスクの織り込みはほぼ終了したとの見方が強まっています。
暗号資産関連ニュース
- JPモルガン:Strategy社(旧MicroStrategy)がBTC売却の可能性に言及。リスク要因ではあるものの、逆に売り圧力が解消されれば上昇加速材料にもなり得るとの見方も
- RWA(現実資産のトークン化):RobinhoodのCEOが「クリプトの未来はミームコインではなくRWA」と発言。決済のT+1問題(株を売っても現金化に1〜2日かかる)がオンチェーン化によって即時化できる利点を強調
- Solana:トークン化株式取引が最も活発なチェーンとして評価され、約5%上昇
- eToro:オンチェーン先物取引所「Extended」に投資し、伝統的証券会社もオンチェーン事業への参入を強めている
規制の動き
プライバシーコインへの規制強化が世界的なトレンドとなっています。EUのMiCAや米SECの圧力を受け、主要取引所が上場廃止を進める中、こうした取引は分散型取引所(DEX)へと移行しつつあります。
- 米国:SECが2026年中に暗号資産の提供・ブローカー要件・市場構造に関する3つの規則制定を予定
- EU:2026年7月1日以降、すべての暗号資産サービス事業者はMiCAに基づくフル認可の取得が必須に
為替・原油市場の動き
ドル円は一時的に円高に振れましたが、日米の金利差を考えるとすぐに戻る可能性があり、目先はドル買いのチャンスとも見られています。ドル金利の高止まりが続くと見られる中、資産をドル建てに振り向けていく必要性は今後も変わらない、あるいはむしろ強まっていくとの見方もあります。
今後の注目ポイント
- ビットコインが5万ドル後半〜6万ドル前半のレンジを維持できるか
- ETFからの資金流出が止まる、あるいは反転するか(反転すれば好材料に)
- イーサリアムのアップグレードやRWAトークン化、AI×暗号資産の融合など技術革新の進展
- 米CPI(物価指標)の発表内容と、それに伴う利上げ・利下げ観測の変化
全体として、雇用統計の弱さや半導体株の調整、規制強化の動きなど不安材料は少なくありませんが、長期保有者による買い増しの動きや、ETFの資金流出が終息に向かいつつある兆しなど、底打ちを示唆するサインも同時に見られる局面です。特定の領域に資産を偏らせすぎず、分散を意識した投資スタンスが引き続き重要と言えそうです。

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