仮想通貨市場レポート:短期の波乱要因と、中長期で進む「実用化」の潮流(26年7月13日)

仮想通貨市場レポート:短期の波乱要因と、中長期で進む「実用化」の潮流


1. 直近の価格動向と「冬相場」の空気感

  • ビットコイン:6万2,700ドル前後(朝方の6万4,000ドル圏から下落)
  • イーサリアム:28万8,000円前後(▲1.1%)
  • アルトコイン全般:▲1%程度の下落

市場全体としては、まだ「冬相場」が続いているという見立てが強い状況です。時価総額全体では2.1〜2.25兆ドル規模まで落ち着いており、大荒れの局面は一旦過ぎたものの、楽観一辺倒にはなれない、慎重なムードが漂っています。

背景にあるのは大きく3つの要因です。

  1. 金利・インフレの影響:FRBが利上げ方向に動くと、投資家はリスク資産から離れやすくなります。ドル高も暗号資産にとってはマイナス材料です。
  2. 規制の明確化への期待:ルール整備が進めば機関投資家がより参入しやすくなるとの見方があります。
  3. 機関投資家の存在感の高まり:ビットコインETF・イーサリアムETFの普及により、大手金融機関がトークン化やブロックチェーン活用を本格的に検討し始めています。

2. イラン情勢という下落要因

直近の下落には、地政学リスクの再燃も影響していると見られます。

  • 米軍がイランへの追加攻撃を開始したと報道(11日にも140箇所への攻撃を実施済み)
  • ホルムズ海峡付近での爆発が報告され、イラン革命防衛隊は海峡封鎖の構えを表明
  • 新最高指導者ハメネイ氏の消息不明が続いており、和平交渉が実際に進んでいるのか疑問視する声も

停戦合意からの再度の緊張激化ということで、事態の長期化リスクが高まっている状況です。ホルムズ海峡は原油輸送の要衝でもあるため、封鎖が現実化すればマーケット全体への影響も避けられません。今週も引き続き注視が必要なテーマです。


3. 今週の注目イベント:米CPI発表

  • 7月14日(火)21:30に6月分の消費者物価指数(CPI)が発表されます。
  • 市場予想はインフレ鈍化方向ですが、期待が織り込まれているだけに、結果が予想を裏切った場合の値動きは大きくなりやすい局面です。
  • FRBの利上げ判断に直結するため、暗号資産市場を含むリスク資産全体にとって重要な材料になります。

4. サイクル論から見る「冬相場」の行方

過去のサイクルを振り返ると、必ずしも今の反発がすぐに「冬の終わり」を意味するとは限らないことが分かります。

  • 2022年の同時期も一時16%反発しましたが、その後FTX破綻などをきっかけに再び下落しました。
  • 過去2サイクルとも、本格的な上昇は「年明けから」というパターンが繰り返されています。
  • ロング・ターム・ホルダーの供給比率(HODL Wave)を見ると、まだ過去の底打ち水準まで回復しておらず、下落余地が残っている可能性が指摘されています。

目先の反発に安心せず、長期投資家としては引き続き慎重な姿勢が求められそうです。


5. ビットコイン(BTC)— 市場の体温計

  • 2025年末につけた史上最高値(約97,860ドル)から50%以上下落し、現在は62,000〜63,000ドル付近でのレンジ推移が続いています。
  • 6万4,000ドル付近で明確に抵抗され、6万2,000ドル前後では下値が支持される展開。方向感が出るのはもう少し先になりそうです。
  • 値動きはETF経由の資金フローに左右されやすくなっており、「これまでの半減期サイクル通りに動く」派と「市場構造そのものが変化した」派とで見方が分かれています。
  • 予測市場では7月中の65,000ドル到達の可能性も語られる一方、下振れリスクも残る、という玉虫色の状況です。

6. イーサリアム(ETH)— 意外な底堅さ

  • 価格は1,770〜1,800ドル台で推移。センチメントは「中立〜強気」で、実はビットコインよりも投資家心理は良好という見方があります。
  • 1,800ドル付近が重要な抵抗ラインとして機能しており、RSIには弱気ダイバージェンスが見られるため、短期的には1,700ドル割れの可能性も。
  • 中長期的な強気材料としては以下の3点が挙げられています。
    1. RWA(現実資産)のトークン化の加速による経済圏拡大への期待
    2. ロビンフッドの新チェーンがガストークンにETHを採用したこと
    3. 企業による大量購入(ビットマインが19万ETH追加購入など)
  • ただし個人投資家の需要は減少傾向にあり、先物トレーダーも強気一辺倒ではありません。ETH時価総額(2,100億ドル)をTVL(2,600億ドル)が上回る「逆転現象」も話題になっていますが、TVLにはステーブルコインや他の資産も含まれるため、単純に「割安」と判断するのはやや強引という指摘もあります。
  • スケーラビリティ向上・手数料削減のアップグレードやETF承認も、中長期的な追い風材料です。

7. その他の通貨:テクニカル分析

通貨現在値ポイント
XRP1.07ドル移動平均線密集を上抜けできず、1.03ドル付近まで下落の可能性
SOL76ドル77.8ドルの水平線を下抜け、サポート・レジスタンス転換。72ドル付近が次の支持線候補
Gold4,056ドル4,200ドルに届かず反落。4,000ドル割れの可能性も
USD/JPY162.25円アセンディングトライアングルを形成中。163円台突入の可能性

8. アルトコイン全体の潮流:「夢」から「実用」へ

投機一辺倒の時代が終わり、実際に使われているプロジェクトに資金が向かう傾向が強まっています。注目されるテーマは以下の通りです。

  • AI×ブロックチェーン(例:$KITE)
  • RWA(実物資産のトークン化)(例:ONDO)
  • L1/L2のスケーリング(Solana、Arbitrumなど)

興味深いのは、ビットコインが停滞・下落していても、こうした実用系アルトコインだけが上昇するという「デカップリング(切り離し)」現象が見られる点です。


9. DeFi — 「実験」から「金融インフラ」へ

  • DeFiのTVL(預けられている資産総額)はすでに1,300億ドル超。2026年時点で600億ドル規模の市場が、2030年には2,560億ドル超まで成長するとの予測もあります。
  • BlackRockのような大手金融機関も、本格的にトークン化への参入を進めています。
  • UniswapやAaveなどでは「手数料スイッチ」の導入により、トークン保有者への収益還元の仕組みが整いつつあり、より持続可能なビジネスモデルへの移行が進んでいます。

10. NFT — 投機からユーティリティへ

  • 取引量はピーク時から大きく減少したものの、市場自体は安定してきています。
  • 生き残っているのは、ブランド力のあるコレクション(BAYC、CryptoPunksなど)か、明確な使い道を持つものに絞られてきています。
  • 用途もアート・コレクションから、ゲーム内資産、チケット・会員権、デジタルID・来歴証明といった実用分野へとシフトしています。
  • フォーチュン500企業の4割以上が、サプライチェーン管理やロイヤルティ制度などですでにNFTを業務利用しているとのデータもあります。

11. クラリティ法案(規制明確化法案)の行方

  • 統合法案が今週中に公開される見通しです。
  • 上院本会議での採決は7月20日の週に行われる可能性があるとも報道されていますが、倫理条項での合意には至っておらず、来週中の採決はほぼ不可能との見方が有力です。
  • 審議可能な期間は7月中旬から8月第1週までと限られており、休会明けは中間選挙モードに入るため、年内成立自体が困難になるとの懸念も出ています。

イーサリアムが本格的に上昇していくためには、この法案の成立が一つの前提条件になるとも言われており、今後の動向が注目されます。


まとめ

  • 短期的には、イラン情勢の緊迫化と米CPI発表という2つの材料に要警戒。値動きが大きくなりやすい局面が続きそうです。
  • 中長期的には、「冬相場」がまだ続く可能性を織り込みつつも、市場全体としては投機主導から実用重視へとシフトしていることが、ビットコイン、イーサリアム、アルトコイン、DeFi、NFTのいずれのセクションからも読み取れます。
  • 派手な値動きよりも、実際に使われる技術・仕組みが評価される時代に入りつつある、というのが今回のレポート全体を通じた一貫したメッセージです。

長期投資の観点では、こうした荒れやすい局面を焦らずに乗り越えながら、少しずつ買い増していくスタンスが妥当という見解が根強くあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました