仮想通貨「冬の相場」はいつ終わる?2022年との比較と、市場を動かす6つの注目材料(26年7月31日)

動かない相場、広がる無関心

ビットコインは現在64,200〜64,300ドル付近で推移し、値動きがほとんどない状態が続いています。イーサリアムも30万6,000円台で0.2%安、他のアルトコインも軒並み2%未満の値幅にとどまっており、市場全体が「無関心相場」と呼ばれる停滞局面に入っていることがうかがえます。

世界の暗号資産市場全体の時価総額は約2兆2,700億ドル。2025年に大きく値上がりした反動で、現在は行き過ぎた分を冷やす調整局面にあります。ただし今回の調整には、これまでとは異なる特徴があります。話題性だけの銘柄よりも、実際に使われている、あるいはトークノミクス(経済設計)がしっかりした銘柄にお金が集まる傾向が強まっているのです。「誰も興味を示さない」static な停滞ではなく、水面下で投資マネーの「質」が変化している時期だと捉えると理解しやすいでしょう。

マクロ環境:インフレ、地政学、そして株高

昨日の米国株式市場は主要指数が上昇。特にMicrosoftはAIインフラ投資への懸念が和らいだとの好調な見通しを示し、過去18年で最大の上昇率を記録しました。

一方、個人消費支出(PCE)は前年比3.7%上昇とエコノミスト予想にほぼ一致。伸び自体は前月から鈍化していますが、中東情勢の再燃によりこの鈍化が一時的なものにとどまる可能性が指摘されています。実際、イランが米軍基地を攻撃し米軍も報復するなど、緊張は再び高まっており、インフレが長引けば長引くほど利下げは遠のき、仮想通貨市場にとって逆風となる構図が続いています。

なお日銀の金融政策決定会合では政策金利は据え置きとなり、今後の利上げ方針はすでに市場にほぼ織り込まれています。来週は米雇用統計(水曜のADP、金曜の非農業部門雇用者数・平均時給)が次の注目材料です。

コインベース決算に見る「冬相場」の実態

第2四半期のコインベース決算では、577億円の純損失を計上。取引高の急減が背景にあり、まさに「冬相場」を象徴する内容といえます。

ただし2022年当時と比較すると状況はやや異なります。2022年はQ1からQ4まで全期間で純損失を計上し、通期でも赤字。Q2単体でも11億ドルの損失を出していました。それに対し今回のQ2損失は3.5億ドルと、相対的には抑えられています。背景には事業の多様化があります。当時は取引手数料への依存度が高かったのに対し、現在はサブスクプラン、ステーブルコイン事業、予測市場参入など複数の収益源を確保できるようになったことが、赤字幅を抑える要因になっています。

2022年 vs 2026年:冬相場の共通点と相違点

過去の冬相場との比較は、今後の回復を占ううえで参考になります。

項目2022年2026年(現在)
下落幅高値(4.6万ドル)から65%程度下落高値(約12.6万ドル、2025年10月)から約50%下落
下落の引き金セルシウス、スリーアローズキャピタルなど過剰レバレッジ業者の連鎖破綻、最後にFTX破綻ストラテジー社が優先株配当のためビットコイン売却、追随する形で他のトレジャリー企業(日本企業含む)も売却
金利環境記録的インフレに対しFRBが急速利上げ利下げ再開期待の後退、目先の利上げ観測の高まり
資金の逃避先国債など伝統的安全資産AI関連銘柄・大型IPOへの資金シフト

共通しているのは、レバレッジの巻き戻しと、金融引き締め方向への警戒、そして資金が別セクターへ流出したという構造です。2022年もFTX破綻直後は「仮想通貨は終わり」という悲観が広がっていましたが、そこから12万ドルまで回復した経緯があります。過去に何が転換点になったかを踏まえ、今回はどんな要素が次の上昇のきっかけになりうるかを整理してみます。

次の上昇に必要な6つの要素

  1. FRBの利下げ再開 — インフレ鈍化と雇用減速が伴えば上昇の大きな要因になり得ますが、目先は9月FOMCでの利上げ観測が強まっています
  2. ビットコインETFへの資金フロー反転 — 昨日はわずかな流入にとどまり、ほぼ変化なしの状況が続いています
  3. レバレッジ問題の一巡 — ストラテジー社はビットコイン売却後、株式売却などを通じてドル資産を積み増しており、数年分の利払いに対応できる体制を整えつつあるとされ、この項目は達成に近づきつつあります
  4. 地政学リスクの後退 — 米イラン情勢の沈静化はリスクオフ要因の解消とインフレ鎮静化の両面に寄与します
  5. AIバブルの調整・資金ローテーションの巻き戻し — AI関連への資金流入が一服し調整が入れば、仮想通貨市場へ資金が巻き戻る可能性があります
  6. 規制環境の前進(クラリティ法案の成立) — 機関投資家の参入を後押しする材料として最も注目されています

クラリティ法案の最新動向:ホワイトハウスの判断が焦点

米上院議員がクラリティ法案に関する倫理規定の改定版をホワイトハウスに提出したとの報道がありました。焦点となっているのは、規則違反時の罰則執行権限を司法省だけでなく州の司法長官にも与えるかどうかという点です。これは民主党側が強く求めていた内容で、以前提示された案では執行権限が司法省のみに限定されており、「身内による取り締まりで実効性がない」との批判がありました。

ホワイトハウスは今年5月にこの提案を一度拒否した経緯があります。理由は、州司法長官に執行権限を与えると民主党寄りの州から政権への攻撃材料にされかねないというものでした。今回改めて改定案が提出されたことで、トランプ大統領がこれを受け入れるかどうかが法案成立の大きな分岐点になりそうです。

規制の全体像:GENIUS法とデジタル商品分類

クラリティ法案に加え、すでに成立している規制動向も市場の追い風になっています。2025年半ばに成立したGENIUS法は、ステーブルコインについて初の連邦レベルのルールを整備し、準備金100%の裏付けを義務付けました。またSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)が協力し、ビットコイン・イーサリアム・ソラナ・XRPを「デジタル商品」として分類したことで、これらは当面証券法の対象外となっています。

これは「まず取り締まってから考える」という従来の姿勢から、「先にルールを明確にする」という方向への転換を意味しており、業界にとっては動きやすい環境が整いつつあると言えます。

個別銘柄・アセットの状況

ビットコイン(BTC):現在64,300ドル付近。4時間足では移動平均線の密集を抜けサポート形成の動きが見られ、RSIも底打ちの兆候。週末から週明けにかけて66,000ドル試しの展開もあり得ますが、マクロ環境を踏まえると本格反転の判断は時期尚早で、62,000ドル前後での押し目買いが有効な戦略と考えられます。回復のカギとなるのは、企業・国家による買い増しの再開、ETF資金流入の増加、世界的な利下げ、そして2024年半減期による供給減少効果です。

イーサリアム(ETH):現在1,908〜1,918ドル。移動平均線が密集しており、しばらく低迷した推移が予想されます。史上初めて3四半期連続のマイナス成長という厳しい状況にある一方、興味深いのはシグナルの分裂です。アクティブアドレス数など一般利用者の活動は数ヶ月ぶりの低水準にある一方、大口保有者(クジラ)はこの安値圏でひそかに買い集めている観測があります。短期的な弱さと、大口プレイヤーの「今が買い時」という判断が同居している状況です。押し目の目安は1,760ドル付近です。

XRP:現在1.08ドル。1〜1.1ドルのレンジでの底打ちが続くと見られています。

ソラナ(SOL):現在74ドル。日足の移動平均線をすべて下回っており、上昇しても再度売られる展開が続く可能性が高いとみられます。一方でミームコイン以外のアプリケーション利用が増加し、機関投資家からの関心も高まっている点は中期的なプラス材料です。

HYPEトークン:現在55.59ドル。想定していた53ドル付近でぴったり反発しましたが、この反発に飛び乗るのはリスクが高く、60ドル付近まで引きつけてからのショート戦略が有効との見立てです。

AAVE:現在99.57ドル。直近は非常に強い動きで、移動平均線も完全に上向きに転換しつつあります。100ドル付近で一旦上値を抑えられた後にブレイクする展開が想定されます。DeFi全体で見ても預けられている資産総額(TVL)は1,300億ドルを超え、2026年には市場規模1,112億7,000万ドルまで成長すると予測されており、Aaveはその牽引役の一つです。

ゴールド:現在4,082ドル。直近2日反発しましたが、4,150ドル付近までの戻りにとどまり、その後は再び売られレンジ相場が続くと見られています。

ドル円:現在160.4円。当局による為替介入が実施され一時157円台まで急落しましたが、その後の反発は強く、短期的には162円付近までの戻りもあり得ます。ただし2回目の介入リスクを市場が意識するため、160円〜163円のレンジ継続が想定されています。

アルトコインの注目テーマ

冬相場のなかでも、構造的に資金が向かいやすいテーマが3つ挙げられます。

  1. RWA(実物資産のトークン化):株式や債券などの現実資産をブロックチェーン上で扱う仕組みで、Ondo(ONDO)が代表格です
  2. AI×暗号資産:分散型AIインフラを目指すBittensor(TAO)、Fetch.ai(FET)などが注目されています
  3. 高性能ブロックチェーン:Solana(SOL)はミームコイン以外のアプリケーションも増え、機関投資家の関心も高まっています

このほかEthena(ENA)、Chainlink(LINK)、Cardano(ADA)、Stellar(XLM)なども注目銘柄として挙げられます。

NFTについても、もはや「プロフィール画像目的の投機」ではなく、ゲーム内アイテムやイベントチケット、ブランドのロイヤリティプログラムなど実用面へのシフトが進んでいます。フォーチュン500企業の40%以上がすでに何らかの形でNFTを業務に活用しているというデータもあり、投機から実用への移行が着実に進んでいることがうかがえます。

季節性にも要注意

8月・9月はビットコインの月間パフォーマンスが歴史的に悪いとされる時期です。逆に10月は年間を通じて最もパフォーマンスが良い月とされており、この夏をどう乗り切るかが今後の大きな見どころとなりそうです。

まとめ

現在の市場は、2022年の冬相場と共通する構造的な弱さ(レバレッジの巻き戻し、資金の逃避)を抱えつつも、下落幅は当時より小さく、コインベースの事業多様化に見られるように業界の耐性は増しています。加えてGENIUS法やデジタル商品分類といった規制の明確化、クラリティ法案の進展次第では、機関投資家の参入を後押しする環境が整いつつあります。短期的にはインフレ・地政学リスク・季節性という逆風が残るものの、利下げ再開、ETF資金の反転、地政学リスクの後退という条件が揃えば、次の上昇局面への転換点となる可能性があります。

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